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【記録員コラム】ランダウンプレイを見極める

 2025年3月、東京ドームにてシカゴ・カブスvsロサンゼルス・ドジャースのMLB開幕戦が開催され、野球界は大いに盛り上がりを見せています。この雰囲気の中、3月28日に開幕するNPB公式戦にもご興味を持っていただけたらと思います。

 ひと足先には3月14日にウエスタン・リーグ、3月15日にイースタン・リーグのファーム公式戦が開幕しました。私は阪神タイガースの新しいファーム本拠地となった日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎での開幕カードの公式記録員を担当したのですが、正直に冷や汗をかいたプレイがありましたので、紹介したいと思います。

 2025年3月15日、阪神タイガース対広島東洋カープ2回戦(SGL)の7回表、一死二三塁、広島の持丸選手が投手へのゴロを打ち、三塁走者の羽月選手が飛び出していて三本塁間でランダウン(※)プレイが始まりました。その間に打者走者は一塁を回って二塁へ進もうとしたので守備側はそちらをアウトにしようとも送球しますが結局、最後は三塁走者だった羽月選手が三塁ベース付近でタッグアウトとなり、二死二三塁となりました。このプレイにおける野手の送球は下記の通りです。

投手→三塁手→捕手→一塁手→投手→遊撃手→捕手→左翼手

 最後には左翼手が三塁にまで来て走者をタッグアウトにしたので、スコアには「1523162-7C」と記入しました。一度でも野球のスコアを記入したことがある方には混乱してしまう状況がご想像いただけるのではないでしょうか。

※RUN-DOWN「ランダウン」(挟撃)=塁間で走者をアウトにしようとする守備側の行為

 NPBの公式記録員は、ヒットかエラーかといった打撃の記録や、自責点か非自責点かといった投手の記録だけでなく、送球した野手に与えられる補殺、アウトにした野手に与えられる刺殺といった守備の記録も残しています。ですので、ランダウンプレイにおいても、どの野手が送球に関わり、どの野手が走者をアウトにしたのか、正確に見極める必要があります。

 とはいえ、先に紹介したような長く続くランダウンプレイを正確に記録するのは正直に言って至難の業です。それでも、私がこのランダウンプレイを正確に記録できたのには理由があります。

 それは、「事前の準備」です。具体的に、私は試合が始まる前に必ず下記のことを確認するようにしています。

  • 守備者の背番号を確認しておく。(二塁手は○番、遊撃手は○番など)
  • 守備者の特徴を確認しておく。(一塁手は身体の大きな外国人、二塁手はアンダーソックスを見せるオールドスタイル、左投は基本的に投手か一塁手、など)
  • スコアシートとは別に白紙を用意しておき、プレイを見ながら咄嗟のメモをできるようにする。

 実際、先のランダウンプレイ中、私はプレイから目を離すことなく野手の背番号、特徴を確認しながらペンを持つ右手で白紙に守備者をメモし、後からスコアシートに正確な結果を記入しました。

 このコラムを読んでいただいている方の中には、少年野球や草野球のスコアを書く機会があるという方も多いのではないでしょうか。私が仕事としているプロ野球では、選手達はその名の通りプロなので、公式記録員が想定していないようなプレイが起きることは少ないです。むしろ、子供達が引き起こすミラクルなプレイを記録する方々に敬意を表します。そんな方々にプロの公式記録員として少しでもお役に立てたらと思い、今回のコラムを書きました。

【NPB公式記録員 伊藤亮】