【コラム】チームの救世主になれる逸材に注目/セ・リーグ新人事情
阿部慎之助新監督の下で昨年は4年ぶりのリーグ優勝を飾った巨人。高校No.1遊撃手と評されていたドラフト1位の石塚裕惺は3月13日に左有鉤骨骨折で手術を受け、試合復帰まで2、3カ月かかる見込みとなったが焦る必要はないだろう。体力強化、技術面のレベルアップを図り数年後に一軍でレギュラーを目指す。大卒で即戦力と目されていた選手も開幕一軍が厳しい状況となった。新人で春季キャンプ唯一の一軍スタートだったドラフト3位・荒巻悠はオープン戦で17打数2安打、打率.118と結果を残せずファーム降格。ドラフト2位・浦田俊輔は俊足をアピールしていたが、3月11日のソフトバンク戦(長崎)で盗塁のスライディングの際に左足首を捻挫。左の救援陣は層が薄く、ドラフト5位の宮原駿介はファームで結果を残せば一軍で登板のチャンスが巡ってきそうだ。
リーグ連覇を逃した阪神で、最も目立ったのが育成ドラフト1位入団からわずか3カ月後の3月7日に支配下昇格を勝ち取った工藤泰成だ。最速157キロの直球と落差の鋭いフォークを武器に春季キャンプの練習試合、オープン戦と無失点の好投を続けて大きなインパクトを与えた。現役時代の藤川球児監督と重なる投球スタイルで、救援陣の一角に食い込んでくるか。同じくドラフト3位の木下里都も2月の実戦初登板で155キロを計測。ツーシームの精度も高く、三振奪取能力が期待できる。ドラフト1位左腕の伊原陵人も開幕から先発ローテーションに入る可能性が十分にある。先発陣を見ると、大竹耕太郎が下肢の張りのためファームで調整し、髙橋遥人は昨年11月に左腕に埋め込んだプレートを除去し、実戦復帰までもう少し時間が掛かる。西勇輝、伊藤将司もオープン戦でピリッとしない。伊原が先発で白星を積み重ねれば、チームにとって大きな助けとなる。
レギュラーシーズン3位から下克上で日本一に上り詰めたDeNAは救援陣が盤石と言えない。その中で明るい材料がオープン戦で快投を見せたドラフト2位の篠木健太郎だ。手元でホップするような軌道の直球とキレ味鋭いフォークは十分に通用する。雄叫びを上げるなど気迫を前面に押し出す投球スタイルもチームに勢いをもたらす。勝利の方程式を担うセットアッパーにとどまらず、守護神に抜擢される可能性がある。ドラフト3位の加藤響も走攻守3拍子そろった遊撃手で首脳陣の評価が高い。東海大相模高のときから注目された逸材だったが、東洋大の野球部退部を経て、独立リーグの徳島でプレーした。挫折を乗り越え、精神的にもたくましくなった。遊撃は若手の成長株の森敬斗がいるが定位置奪取を狙う。ドラフト1位の竹田祐は多彩な変化球を操り、ゲームメーク能力の高さに定評があるが、直球の出力をもう少し上げたい。
首位争いを繰り広げていたが夏場の大失速で4位に終わった広島は得点力の向上が大きなカギを握る。長距離砲として期待されるドラフト1位の佐々木泰は3月5日のDeNA戦(横浜)で負傷交代し、左太腿肉離れで離脱したのは痛手だ。完治までに1カ月は要する見込みとなっている。ドラフト4位の渡邉悠斗もパンチ力に定評があり、現有戦力を脅かす活躍を見せてほしい。投手はドラフト3位の岡本駿の評価が上がっている。プロ初の実戦登板となった2月19日の練習試合・ロッテ戦で1回3者連続三振と完璧な投球。その後のオープン戦でも好投を続けている。大学から投手に転向したため伸びしろは十分だ。ドラフト2位左腕の佐藤柳之介も実戦でアピールを続けている。昨オフに九里亜蓮がオリックスにFA移籍したが、先発陣は玉村昇悟、常廣羽也斗、森翔平、新外国人のドミンゲスらが熾烈な競争が繰り広げている。長丁場のシーズンで佐藤柳の力が必要な時期は必ず来るだろう。
5位のヤクルトは強力打線がリーグ屈指の破壊力を持つだけに、投手陣をどう立て直すか。ドラフト3位の荘司宏太は右腕を高々と上げる独特の投球フォームからチェンジアップを武器にする左腕のリリーバー。荒れ球で四球が多いのが気になるが、救援で稼働すればチームにとって大きなプラスになる。ドラフト1位の中村優斗は新人合同自主トレーニングで下半身のコンディション不良により出遅れ、2月の春季キャンプも二軍で過ごした。先発、中継ぎと起用法の幅が広く、即戦力として期待されるが万全の状態を取り戻すことが重要だ。焦る気持ちを抑えて一軍のマウンドを目指す。ドラフト2位のモイセエフ ニキータは村上宗隆の後継者として、じっくり育てる。村上は高卒1年目にファームで打率.288、17本塁打、70打点、16盗塁をマークし、一軍でプロ初打席初本塁打のド派手なデビューを飾っている。モイセエフもファームで結果を残せば、一軍デビューが見えてくる。
3年連続最下位に沈んだ中日は巻き返しに向け、新戦力の活躍が不可欠だ。ドラフト1位の金丸夢斗は痛めていた腰の回復を優先。2月の春季キャンプは二軍スタートだった。3月に入ってシート打撃に登板するなど順調な調整を見せており、4月以降に一軍のマウンドを目指す。髙橋宏斗と共にチームを背負って立つ逸材がベールを脱ぐときが楽しみだ。一軍デビューはドラフト2位の吉田聖弥の方が早いかもしれない。3月15日の西武戦(バンテリンドーム)で5回2安打5奪三振1失点の快投。緩急を駆使し、制球力で崩れる不安がない。中日の先発陣は層が厚いと言えず、アピールを続ければチャンスが巡ってくるだろう。社会人No.1捕手のドラフト4位・石伊雄太は強肩に加えてインサイドワークに定評がある。昨年は木下拓哉、宇佐見真吾、加藤匠馬、石橋康太が先発マスクをかぶったが、レギュラーを固定できなかった。石伊が春先からマスクをかぶる可能性は十分にある。
【文責:週刊ベースボール】