【コラム】チームの救世主になれる逸材に注目/パ・リーグ新人事情
昨年は圧倒的な強さでV奪回を果たしたソフトバンク。今年はリーグ連覇、5年ぶりの日本一を狙う。投打で戦力が充実している中、新人が一軍の座をつかむのは容易ではない。春季キャンプで一軍スタートのドラフト2位・庄子雄大は3月13日にファーム降格。俊足とバットコントロールに磨きをかけてレベルアップを図る。ドラフト6位の岩崎峻典はオープン戦で4試合に登板して無失点に抑えたが、二軍降格に。ブルペン陣が充実しているため首脳陣は苦渋の決断となったが、ファームでアピールを続けて一軍デビューを目指す。ドラフト1位の村上泰斗は将来のエース候補。最速153キロの直球はうなりを上げるような軌道でまだまだ球速が伸びる。体力強化を含めてプロで戦う土台を作る。ドラフト4位の宇野真仁朗、5位の石見颯真は共に強打の遊撃手として評価が高い。村上同様に高卒入団で焦る必要はない。充実した施設環境で力をつけ、数年後にチームの主力選手を目指す。
2年連続最下位から昨年2位に躍進した日本ハムは若手の成長が著しい。球団がどのように育成するか注目されるのが、ドラフト1位の柴田獅子だ。投手で最速151キロの直球に加えて多彩な変化球で総合力が高い。打撃でも左打者で高校通算19本塁打を放ち、ミート力が光る。日本ハムは大谷翔平(ドジャース)、矢澤宏太と投打の二刀流でプレーしている選手たちの育成プログラムがある。柴田の能力を引き上げる環境は整っているといえるだろう。ドラフト3位の浅利太門、6位の山城航太郎は大卒入団だがまだまだ成長途上。制球力を高めて救援陣の一角を狙う。即戦力として期待が掛かるのが5位の山縣秀。大学トップクラスの守備範囲を誇る遊撃手で、打撃もつなぎ役として潤滑油になる。2位の藤田琉生は198センチの長身から投げ下ろす直球が武器の左腕。スケールの大きさで柴田に見劣りしない。フィールディング、けん制などの動きも俊敏だ。
3位のロッテは支配下で指名した6人のうち、大学、社会人出身が5人と即戦力の選手を指名した。ドラフト1位の西川史礁は大学球界を代表する強打者で、長打力だけでなくヒットゾーンに飛ばす能力が高い。オープン戦でも打撃好調で開幕スタメンが見えてきた。ドラフト2位の宮崎竜成もアピールしている。オープン戦で2試合連続適時打を放ち、本職の二塁だけでなく遊撃や三塁を守る。走塁技術も高く実戦向きの選手だ。日本生命で中軸を担ったドラフト6位の立松由宇は広角に長打を飛ばす。社会人野球で捕手から内野に転向したが、ロッテでは捕手がメインに。右足の指の骨折から復帰を目指す正捕手の佐藤都志也、若手成長株の寺地隆成、ベテランの田村龍弘などライバルが多いが、「強打の捕手」で存在感を見せたい。ドラフト3位の一條力真は端正な顔立ちで話題に。190センチの長身から投げ下ろす直球は威力十分。救援で活躍すればさらに人気が出るだろう。
4位の楽天は、ドラフト1位でアマチュア球界No.1遊撃手の宗山塁を獲得。5球団が競合した逸材は日本球界を代表する選手に飛躍することが期待される。オープン戦では安定感抜群の守備に加え、打撃も安打を積み重ねて初めて対戦する投手への対応力が光る。総合力の高さは際立っており、新人王の有力候補であることは間違いない。オープン戦で評価を高めているのが、ドラフト4位の江原雅裕だ。最速157キロの直球を武器に制球力もまとまっている。3月14日のDeNA戦(横浜)では牧秀悟から空振り三振を奪うなど1回無安打無失点。救援陣は宋家豪が右膝半月板の手術を受けて長期離脱しており、ドラフト3位の中込陽翔と共にリリーバーで戦力になってほしい。ドラフト5位の吉納翼は早大で東京六大学通算13本塁打をマークした長距離砲。外野陣は中堅が辰己涼介、右翼は小郷裕哉で確定している。残り1枠の左翼を巡る競争で定位置を勝ち取れるか。
リーグ4連覇は叶わず、5位に低迷したオリックスは若い力の台頭が渇望されている。ドラフト1位の麦谷祐介は走攻守3拍子そろった外野手。コメントにもスター性を感じる。課題のコンタクト能力を上げることが定位置獲りのポイントになる。実戦向きの打撃で評価が上昇しているのが、ドラフト4位の山中稜真だ。150キロを超える直球をきっちり捉えて選球眼もいい。捕手登録だが、スタメンで出場機会を考えると外野の一角を目指すのが現実的か。オリックスは下位指名の社会人投手が活躍するケースが多い。ドラフト5位の東山玲士は腕の出所が見づらい投球フォームでチェンジアップに定評がある。6位の片山楽生は手元でホップするような直球と多彩な変化球をストライクゾーンにどんどん投げ込める。昨年はドラフト6位で入団した古田島成龍が50試合登板で2勝1敗24ホールド、防御率0.79と大活躍した。東山、片山も救援で1年目から救援でブレークを狙う。
最下位からの逆襲を目指す西武は、ドラフト1位で高校球界を代表する遊撃手の齋藤大翔を獲得。まだまだ体の線は細いが、野球センスは抜群だ。強肩と軽快なフットワークに磨きをかけ、源田壮亮の後継者として数年後の主力選手を目指す。2位の渡部聖弥は得点力不足が課題の打線でクリーンアップを担う可能性が十分。鍛え上げられた体で軸がブレずに力強い打球をはじき返す。広陵高で同期だった楽天の宗山と同じパ・リーグで戦うことになり、負けられない。沖縄・エナジックスポーツ高から初のドラフト指名となった6位の龍山暖は高校レベルを超えた強肩が大きな武器だ。ファームで攻守に鍛錬を積んで将来の正捕手を目指す。育成ドラフト2位の佐藤太陽は、内野ならどこでも守れる職人気質のいぶし銀。オープン戦で一軍を経験できたことは成長の糧になっただろう。攻守で能力を高め、早期の支配下昇格を目指す。
【文責:週刊ベースボール】