【コラム】開幕から5試合連続安打の楽天・宗山塁、ひたむきに野球と向き合う“有言実行”の男
追い込まれても慌てることはない。しっかりとボールを見極め、的確にミートする。4月4日のロッテ戦(ZOZOマリン)。4回二死一、三塁の好機で打席に立った楽天・宗山塁はカウント2-2からの5球目、内角低めの154キロのストレートを逆方向に運んだ。打球はレフト前で弾み、楽天が1点先制。「追い込まれていたので、なんとかしようという気持ちでいました」と気持ちのこもった一打はプロ初の決勝打にもなった。
この日は初回に右前打をマーク。開幕から一番、二番でスタメン出場を続け5試合連続安打、そして3試合連続マルチ安打となった。翌5日は無安打に終わり記録は途切れたが、6日には再び2安打。波が少ないのは一流の証しだ。昨秋のドラフトで5球団が1位で競合し、「20年に1人の遊撃手」と称された逸材はプロでその実力を遺憾なく発揮している。
自主トレ時から“本物”のお墨付きを得た。1月に宗山の打撃を直接、目にした後藤武敏一軍打撃コーチは高い評価を口にしていた。
「マシン打撃でセンター方向にライナー性の打球をガンガン打ち返している姿を見て、打球のコンタクトのブレが少ないことに驚きました。ブレが少ない選手というのは、プロでもなかなかいませんから。このようなスイングができるということは軸で回ることができているということ。軸回転で打つことができるとヒッティングゾーンの幅が広がり、ミスショットが減る。バランスが良く安定感があるのはそのためです」
4月7日現在、10本のヒットを放っているが、内訳は左翼3本、中堅2本、右翼5本。広角に打ち分ける打撃が武器なのは間違いない。
強い決意が成長の源となっている。中学時代には行事で夢を発表する場があり、大勢の前でこう語ったという。「プロで記録を残したい。具体的には首位打者、最多安打、40歳まで現役、引退試合を開催していただけるような選手になる」。1月9日、楽天モバイルの室内練習場で行われた新人合同自主トレの初日には40歳を超える「45歳くらいまで現役を続けていきたい」と口にした。自ら発信することで責任を持つ。父・伸吉さんからの教えだ。
「高い目標を持つことの大切さです。口で言ったり、文字に残したり、恥ずかしがらずに表現できないといけない、と。年齢を重ねると難しくなるんですけど、そこはずっと大切にしてきたことです。幼少時から『プロ野球選手になれる』と思って練習に取り組んできました」
小学1年時に野球チームに入る条件として父は「毎日、練習すること」を課した。塁少年は広陵高に入学し、野球部の清風寮に入寮するまで9年間、この約束を守ったという。365日、自宅前の庭に設置した打撃ケージでバットを振った。継続する力も宗山の大きな資質だ。
ひたむきに野球に取り組み、一生懸命プレーする。それが宗山の原点でもあり魅力だ。打撃では首位打者と最多安打、守備ではゴールデン・グラブ賞、さらにベストナインを目標とする。「1年を通して活躍できる選手が獲れる賞だと思うので、そこを毎年狙っていけるようなプレーヤーになりたい」。楽天の背番号1が球界の中心選手へと駆け上がるルーキーイヤーは見逃せない。
【文責:週刊ベースボール】