【パCSファーストS展望】熾烈な優勝争いを繰り広げた日本ハム、オリックスは投手陣が踏ん張れるか
10月11日にエスコンフィールドHOKKAIDOで開幕する「2025 パーソル クライマックスシリーズ パ」のファーストステージ。2年連続2位の日本ハムはリーグ制覇を飾ったソフトバンクにリベンジを果たすため、並々ならぬ決意で短期決戦に臨む。
2年連続最下位から貯金15の2位に躍進した昨年の戦いぶりは、フロックではなかった。今年は1試合だけだった10月を除き、3、4月から6カ月連続月間勝ち越し。シーズン83勝で貯金26と、数字上は優勝しても不思議ではない成績だった。
革新的な起用法が話題になったのは、登板間隔を空けた先発ローテーションだ。北山亘基、金村尚真、山﨑福也、加藤貴之、達孝太、福島蓮、細野晴希、古林睿煬と先発投手たちが「登板後に登録抹消」を繰り返した。コンディションを整え、長いイニングを投げる好循環で23完投は両リーグ通じて断トツトップ。チーム内のハイレベルな争いが相乗効果を生み、高卒4年目の達は16試合登板で8勝2敗、防御率2.09をマークした。
この投手起用で唯一の例外が、エースの伊藤大海だった。開幕から先発ローテーションで投げ続け、リーグ最多の196回2/3で14勝8敗、防御率2.52。2年連続最多勝、自身初の最多奪三振(195)のタイトルを獲得した。
打線は来日2年目のレイエスが打線に不可欠な軸となり、打率.277、32本塁打、90打点で本塁打王、打点王の2冠に。豪快な一発だけでなく、状況に応じて広角に安打を打ち分ける打撃技術が光る。得点圏打率.361はリーグトップで、相手バッテリーからすると抑えるのが最も困難な打者の一人と言えるだろう。清宮幸太郎、万波中正、野村佑希、水谷瞬、田宮裕涼、山縣秀など伸び盛りの若手が多い中、攻守で貢献度が光ったのが郡司裕也だ。捕手、一塁、三塁、左翼と4つのポジションを守り、九番を除くすべての打順でスタメン出場した。111試合出場で打率.297、10本塁打、42打点。チームに必要な役割を全う。首脳陣にとってこれほどありがたい選手はいないだろう。
昨年はソフトバンクと対戦したCSファイナルステージで、3連敗を喫して敗退。伊藤をファーストステージで登板させず、ファイナルステージの初戦に抜擢する大胆な起用法を見せたが投打で圧倒された。今年は豊富な先発陣のコマをどのように登用するか、新庄剛志監督の采配が注目される。
今年から岸田護監督が就任したオリックスは、開幕15試合で11勝3敗1分とスタートダッシュに成功。昨年は打撃不振に苦しんだ西川龍馬、杉本裕太郎、頓宮裕真、中川圭太が快音を響かせ、得点源になった。特に活躍が際立ったのが、プロ7年目の太田椋だ。
3、4月は打率.411、4本塁打、18打点をマーク。その後は好不調の波が激しかったが自身初の規定打席に到達し、113試合出場で打率.283、10本塁打、52打点と打撃3部門で自己最高の成績を記録した。打率.310で首位打者を狙える位置にいた西川がシーズン終盤に「右脛骨骨折」で戦線離脱し、規定打席に届かずCS出場が厳しくなったのは痛手だが、度重なる故障から復帰した森友哉の存在が心強い。9月25日のロッテ戦(京セラD大阪)で今季初アーチを放ち、ホッとしただろう。CSで打棒爆発に期待したい。
投手陣は広島から昨オフにFA移籍した九里亜蓮のタフネスぶりが光った。チームトップの164回1/3を投げて11勝8敗、防御率2.41。気迫を前面に押し出す投球スタイルでファンの心をつかんだ。エースの宮城大弥は7勝3敗、防御率2.39と2年連続で2ケタ勝利に届かなかったが、クオリティースタート(先発で6回以上投げ、自責点3以内)は規定投球回数に到達した投手陣の中でリーグトップタイの81.8%と高い数字を記録している。課題は救援陣だ。今年の救援防御率3.58はリーグ5位。才木海翔、片山楽生、川瀬堅斗と若手の台頭は明るい材料だが、経験豊富な山岡泰輔、山田修義は共に防御率4点台だった。接戦を勝ち取るためにもリリーバーの奮起に期待したい。
夏場以降は優勝争いに絡めず3位に終わったオリックスだが、日本ハムと今季の対戦成績が12勝12敗1分で、ファーストステージの舞台となる敵地・エスコンFでも6勝7敗と苦手意識はない。CSファーストステージで先発が予想される九里は日本ハム戦に6試合登板して4勝2敗、防御率2.18、宮城も5試合登板で2勝0敗、防御率2.25と相性がいい。下克上の舞台は整った。
【文責:週刊ベースボール】