【コラム】代打の極意は「バットを振ること」、ひと振りで試合を決める中日・阿部寿樹
ひと振りにかける男の真骨頂を発揮した。6月21日の巨人戦(東京ドーム)、0対3で迎えた8回、中日の攻撃だ。1点差に追い上げ、なおも二死満塁のチャンス。打席に入ったのは代打・阿部寿樹だった。36歳のベテランは集中力を高めると大勢が投じた初球、外角高めへの152キロ直球を右前にはじき返す。三走・細川成也に続き、二走・高橋周平が本塁に生還する見事な逆転決勝打。9回にも1点を追加した中日は5対3で巨人を破り、6カードぶりの勝ち越しとなった。
「(大勢と)今年は3回、対戦がありましたけど、真っすぐが当たらなかった。前に飛んでくれて良かったです」
昨年オフに楽天から戦力外通告を受け、一時は引退することも考えたというが、プロ入りから7年間を過ごした古巣から声が掛かり4年ぶりに復帰。愛着あるユニフォームに袖を通すと、復活したバッティングを見せている。今季は同日現在、24回代打で起用され、18打数7安打7打点、打率.389。「ここぞの場面の阿部」と井上一樹監督からの信頼も厚い男が代打で最も重要視しているのは「振ること」だと言う。
「僕はもともと初球をあまり振らないバッターだったんですが、パ・リーグへ行ってからはボールを見ても仕方がないと思うようになりました。見ていても始まらないし、今の時代の投手は球速があって、変化球もすごい。見たいは見たいですけど、見ていたらすぐに追い込まれてしまいますから」
代打の醍醐味に関しては次のように話す。
「いい場面で出されるので、そこを意気に感じながら打席に入って、やっぱりそこで打てたときはうれしいですよ。ファンの皆さんも喜んでくれるし、チームに勢いもついて盛り上がる。それを感じながらやってはいますけど、でも一方であまり気にしないでやっている自分もいます。(得点圏打率が.455と高いのも)たまたまじゃないですか。とにかく、いかにボールをバットにコンタクトできるか、要はちゃんとバットを振っていけるか、そこを考えています。それができたら、打球の行方に関してはもうどうにもできないと思うので、考えても仕方がない。まずは前に飛ばすことですね」
パ・リーグで過ごした3年間の経験も大きかった。
「バッターで言えばスイングが違うというか、ひるむことなく、どんどん仕掛けていく。スイングが強く、それは目に見えて分かりました。勉強になりましたし、そこを目指してやっていかないとパ・リーグでは通用しないな、と。野球以外で言えば移動が大変。パ・リーグは飛行機での移動が多く、移動だけで疲れました(笑)」
具体的な数字の目標は立てないタイプだ。「終わってからの数字がすべて」とシーズン中は一喜一憂することがない。与えられた目の前の役割をしっかりと果たし、チームを勝利に導く価値ある一打を放っていくだけだ。
【文責:週刊ベースボール】