【コラム】プロ初のサヨナラ打で連敗ストップに貢献、DeNA新人・宮下朝陽が勝負強さで示す存在感
底知れない能力を秘めた新人が、DeNAに現れた。ドラフト3位の宮下朝陽だ。8月18日の巨人戦(横浜)では、プロ初のサヨナラ打でチームを勝利に導いた。3対3で迎えた9回二死満塁。途中出場の宮下に、この試合2度目の打席が回ってきた。「ここで打ったら、ヒーローだ」。田中瑛斗に2球で追い込まれたが、3球目、高めに浮いた変化球を見逃さなかった。思い切り振り抜いた打球は二遊間を抜け、劇的なサヨナラ勝ちを決めると宮下は右手を高々と突き上げた。
「勝ちにつながったことが、一番うれしいです」
ヒーローインタビューでは「最高です」と喜びを表現。打席では「チャンスだったので、もう全部振ってやろうという気持ちで立ちました」と明かした。自身初のサヨナラ打は3連敗中だったチームにとっても大きな一打となった。
8月24日現在、得点圏打率.343と勝負強さを誇り、左投手に対しては長打力を発揮する。8月1日の巨人戦(東京ドーム)では2回一死満塁でドラフト1位左腕・竹丸和幸の直球を左翼バルコニー席まで運んだ。新人打者が新人投手から満塁本塁打を放つのは53年ぶりの快挙だった。さらに5日の阪神戦(横浜)では髙橋遥人から右翼へ決勝本塁打。11日の中日戦(バンテリンドーム)では大野雄大から、21日の阪神戦(横浜)ではルーカスから一発を放った。今季放った7本塁打はいずれも左投手からマークしている。
「宮﨑(敏郎)さんや牧(秀悟)さんなど、チームには右の長距離打者がたくさんいます。そのバッティング練習や試合に入るまでの準備を見て、いろいろなものを吸収できるので、マネしながら毎日やっていきたいです。右方向に打てるのが強みだと思っているので、それをもっと伸ばしていければと思います」
成長の背景には、苦しんだ大学時代がある。東洋大1年春秋と二塁手で東都二部リーグのベストナインを受賞し、2年春に打率.302、1本塁打、8打点の活躍でチームの一部復帰に貢献。2年夏には侍ジャパン大学代表にも選出され、日米大学野球で優勝を経験した。しかし、3年の7月に右肘の関節内遊離体を除去する手術を受け、復帰まで半年以上を要した。4年春に実戦復帰したものの、リーグ戦序盤に左ハムストリングスを肉離れ。再び離脱を余儀なくされ、秋も打率.190、1本塁打と本来の力を発揮できなかった。
大学時代の悔しさを胸に、プロでは結果を積み重ねている。同じ右打ちの内野手で、ドラフト1位で阪神に入団した立石正広(創価大)、ヤクルト1位の松下歩叶(法大)、阪神2位の谷端将伍(日大)ら、大学時代から注目を集めた同期たちへの対抗心も強い。「自分の中では、立石にも負けているとは思っていないです。プロで活躍して『宮下のほうがいい選手だな』と言われるように、泥臭くやっていきたい」と力を込めた。
DeNAは近年、遊撃のレギュラーを固定できないシーズンが続いている。ポジションをめぐる競争の中で、宮下は攻守に存在感を高めている。8月18日のサヨナラ打は、勝負強さと秘めたる能力を改めて示すものだった。ここからさらに存在感を高め、チームに欠かせない存在へと成長していく。
【文責:週刊ベースボール】