【日本シリーズ展望】投打にバランスが整い勢いに乗るソフトバンク 充実した戦力で日本一奪回を目指す巨人
2000年の長嶋茂雄監督と王貞治監督による「ON対決」以来となる巨人とソフトバンク(当時はダイエー)の戦い。現在は球団会長となった王氏も19年ぶりに実現した“リベンジ”の舞台に「ぜひやり返したい」と興奮を抑えきれない様子で語る。
シーズン最終盤に西武に逆転優勝を許し、2年連続でリーグ2位に終わる悔しさを味わったソフトバンクだが、3年連続の日本一に向けて気持ちを切り替え、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦から史上初の6連勝。敵地でリーグ王者・西武を圧倒したチームは投打にバランスが整い、勢いに乗っている。
シーズン終盤からなかなかつながらなかった打線が、CSファイナルステージ4試合すべてで2ケタ安打。しかも第3戦までは初回に先制点を奪っている。短期決戦では先に流れをつかんだほうが優位に試合を進められるため、日本シリーズでも相手先発の立ち上がりを攻めたい。牧原大成と今宮健太の一、二番コンビで攻撃の起点をつくり、状態を上げてきた柳田悠岐へ。日本シリーズ開幕までの間に行われた紅白戦でも好調な打撃を披露した上位打線がつながれば、初回から大量得点も望めるだろう。
先発投手陣では、エース・千賀滉大、高橋礼とシーズン通じて試合をつくってきた2枚看板に、ポストシーズンに強いバンデンハークと、数々の勝負どころを経験してきているベテラン・和田毅がいる。彼らがイニングを稼いでくれるのが一番だが、モイネロ、森唯斗をはじめ、若手の髙橋純平、甲斐野央ら連投もいとわない頼もしいリリーフ陣が控えているだけに、試合展開によっては早めの継投へ。特に、初戦の先発が予想されている千賀は状況次第で中4日の登板の可能性もあるため、継投のタイミングはカギとなりそうだ。
また、CSでは工藤公康監督の采配がことごとく的中してきた。日本シリーズではどんな“決断”を下すか、こちらも勝敗を大きく分けることになるだろう。2年連続リーグ2位からの日本シリーズ進出に複雑な思いもあるが、「やるからには勝つ」。チームは「あと4つ勝つ」(柳田)ために一丸となっている。
対する巨人も、CSファイナルステージでは3位から勝ち上がってきた阪神と4試合を戦い21点をたたき出すなど、レギュラーシーズンの戦いそのままに、打線が好調だ。その中心に座るのが、23歳の若き四番打者・岡本和真。原辰徳監督も「頼もしく、大人になった」と評価する若き主砲は、CSファイナルステージで通算打率.533、3本塁打、7打点と短期決戦で勝負強さを見せ、シリーズMVPも受賞した。
そんな主砲を中心に、一番の亀井善行から始まる打線は、CS2本塁打ですっかりレギュラーに定着した六番のゲレーロまで切れ目がない。これに比較して下位打線に迫力がないのがウィークポイントでもあるが、そこは脚力や小技でカバーできる田中俊太や若林晃弘らが起用されるため、打ち勝つ野球を展開する。
投手陣ではエース・菅野智之が腰に不安を抱えていたが、10月15日、みやざきフェニックス・リーグの韓国・斗山戦に先発し、約1カ月ぶりの実戦登板ながら6回79球4安打1失点と好投。最速は146キロを計測し、日本シリーズ第3戦での復帰も見えてきた。そんな先発陣は、3つのタイトルを獲得し、シリーズ初戦を任される山口俊を核に、メルセデス、桜井俊貴、髙橋優貴が軸となる。
リリーフ陣は8回の中川皓太、抑えのデラロサが勝利の方程式の要。田口麗斗、高木京介、澤村拓一、大竹寛も復調とブルペン組は頭数もそろい、第2先発候補には古川侑利、戸郷翔征が充てられるなど充実。昨季まで西武でマスクをかぶった炭谷銀仁朗の存在も大きく、充実した戦力で2012年以来の日本一奪回を目指す。
【文責=週刊ベースボール】