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【コラム】史上初の大卒20年連続勝利の偉業を遂げた石川雅規、ヤクルトの41歳左腕はチームのために腕を振る

 降りしきる雨の中、ヤクルトの大ベテランは懸命に腕を振った。6月4日の西武戦(神宮)、今季2度目の先発登板を果たした石川雅規。ストレートの球速は130キロ台前半がほとんどだが、スライダー、チェンジアップ、シンカーなど変化球を巧みに織り交ぜ、西武打線に狙い球を絞らせない。味方打線が3回までに10点の大量援護。それでも気を緩めずに1球1球に魂を込めた。5回は二死からスパンジェンバーグに投手強襲の安打を浴びたが、続く山田遥楓を得意のシンカーで空振り三振。無四球と抜群の制球力も見せ、5回3安打1失点にまとめた。試合は5回裏、ヤクルトの攻撃中、降雨のためコールドゲームに。石川は今季初勝利を手にし、大卒投手としては史上初の1年目から20年連続勝利の偉業も達成した。

 「目の前の試合を勝つ思いで続けてきて20年でした。今季は開幕ローテに入れず、ファームでいろいろなことを考え、試行錯誤していました。今季はここまでもどかしかったですけど、今日の1勝は、一番思いがある1勝なのかなと思います」

 昨季は40歳にして開幕投手を託された石川だったが、今季はオープン戦でまったく結果を残すことができなかった。3月10日のオリックス戦(京セラD大阪)は2回途中7失点、続く17日の広島戦(神宮)は3回9失点。炎上を繰り返し、20年目にして初めて開幕二軍スタートに。二軍で必死に調整し、一軍登板のチャンスを得たのは4月16日の阪神戦(甲子園)だった。阪神打線相手に石川は5回2失点。チームは敗れたが、先発投手としての最低限の役割は果たした。しかし、石川に待っていたのは、いわゆる「投げ抹消」。他投手との先発ローテーションの兼ね合いにより、登録抹消となった。

 これまであまり経験がないことだったが、石川は腐らずに前だけを見据えた。「今まで一軍で投げられていたことは当たり前ではなく、幸せなことだったんだ――」。自らの力でチーム内での地位を少しずつ上げていくしかない。新たな闘志を燃やして二軍で練習に励んだ結果が、通算174勝目につながった。

 高い目標としては通算200勝がある。大台まで残り26勝。同学年の五十嵐亮太が昨季限りで現役を引退したが昨年10月の引退会見で「200勝を見せてほしい」とエールを送られた。右と左、速球派と技巧派。投げ方も違えばタイプも違うが、ともに長きにわたり高め合ってきた。「一軍で結果を残すことが戦友・亮太への恩返し。1勝ずつしか近づけないですけど、笑われても、何を言われても、そこ(200勝)を目指して一生懸命ボールを投げたい」と誓っていた。

 ヤクルトには強い思い入れがある。FA権を手に入れたときも、ほかのチームでプレーしたいという気持ちは生まれなかった。

 「スワローズは僕にたくさんのチャンスをくれました。ましてや入団するときヒジをケガしていましたが、それでも自由獲得枠で獲ってくれましたから。入団後もすごく親身になって僕の体のことを考えてケアしてくれたので、何とか恩返ししたい思いは強いんです」

 2015年に14年目で初の優勝を経験し、神宮球場でビールかけを行った喜びは忘れられない。ふたたび、その歓喜を味わうべく、41歳の左腕は打者一人ひとりを打ち取っていく。

【文責:週刊ベースボール】