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【記録員コラム】守備率には運も必要!?

 2022年も春を感じられる季節となり、3月25日にはプロ野球公式戦が開幕します。待ち遠しく感じられているファンの方々も多いのではないでしょうか。
 公式記録員はオープン戦の開幕から各地の球場へ行き、スコアをつける業務に勤しみますが、それまでのシーズンオフの間の仕事の一つとして、「記録集などの書籍を作成する」という仕事があります。そこで、今回のコラムでは私がこのシーズンオフに取りまとめた記録の中で気になった点を紹介します。

 早速ですが、問題です。下表はとある記録の通算ランキングトップ10です。一体何の記録のランキングでしょうか。わかった方はかなりの記録マスターです。

セ・リーグ
順位 選手名 試合 守備機会 刺殺 補殺 失策 併殺 守備率
1 平田 良介 1096 2005 1937 58 10 11 .995
2 丸 佳浩 1437 2805 2744 40 21 8 .993
3 大島 洋平 1558 3151 3065 62 24 9 .9923
4 山崎 隆造 1157 1884 1803 66 15 18 .9920
5 山本 浩二 2271 4830 4637 154 39 28 .9919
6 藤井 栄治 1221 2291 2188 84 19 30 .9917
7 赤星 憲広 1118 2108 2030 60 18 13 .9914
8 中塚 政幸 1304 2304 2233 51 20 17 .9913
9 青木 宣親 1454 2969 2869 72 28 22 .990569
10 柴田 勲 2066 4135 3983 113 39 22 .990568
パ・リーグ
順位 選手名 試合 守備機会 刺殺 補殺 失策 併殺 守備率
1 島田 誠 1503 3396 3308 66 22 17 .994
2 栗山 巧 1553 2938 2859 59 20 6 .99319
3 大村 直之 1733 3215 3103 90 22 16 .99315
4 新井 宏昌 1922 4128 4004 94 30 30 .9927
5 簑田 浩二 1190 2328 2222 88 18 19 .9922
6 平野 光泰 1119 2406 2331 56 19 6 .9921
7 井出 竜也 1033 2124 2046 61 17 18 .9919
8 柴原 洋 1375 2695 2585 88 22 14 .9918
9 森本 稀哲 1011 1764 1690 59 15 8 .9914
10 秋山 幸二 1948 4217 4079 98 40 26 .9905

 正解は、セパ両リーグにおける外野手の通算守備率のランキングです。(外野手として各リーグ内において1000試合以上出場した選手)

 まず、このランキングの見方を解説します。
 守備率とは、(刺殺+補殺)÷(刺殺+補殺+失策)で算出するもので、「守備機会(=刺殺+補殺+失策)のうち失策をしなかった割合」と言えます。簡潔に補足すると、外野手でいえば刺殺とは「飛球を捕らえて打者走者をアウトにした数」、補殺は「あるプレイで走者のアウトが成立した場合、それまでに送球をした数」です。
 また、失策として数えられるプレイには大きく分けて下記の2種類があります。

  • 「アウトになるはずの打者走者を生かす」プレイ
  • 「走者に1個以上の進塁を許す」プレイ

 この2つに関する特徴として、内野手の失策はゴロをファンブルしたり、一塁に悪送球をしたりの為に打者走者を出塁させたといった①の失策のほうが多いのに対し、プロ野球の外野手は飛球を落とすということはほとんどないので、外野手の失策はヒットの打球をファンブルしたり、捕球後に悪送球をしたりの為に走者に余分な進塁を許したといった②の失策が大半を占めます。

 ②の失策に関しては、もちろん野手の技術によるところではありますが、実は「運」によるところもあります。というのも、野球規則には下記の記載があります。

野球規則 9.12 失策(a)(7)

 野手の送球が、不自然なバウンドをしたり、各塁、投手板、走者、野手あるいは審判員に触れて変転したために、走者に進塁を許した場合には、このような送球をした野手に失策を記録する。
 【原注】この規則は、正確に送球した野手にとっては酷にすぎるように見えるが、きちんと適用しなければならない。
 たとえば、外野手が正確な送球をしたにもかかわらず、二塁ベースに当たってボールが外野に戻ったために走者の進塁を許した場合は、その外野手に失策を記録する。走者の進んだ各塁については、その原因を明らかにしなければならない。

 このように、野球規則ですら②の失策、特に外野手に関しては「酷にすぎる」と認めています。

 具体例として、走者二塁で打者がライト前のヒットを打って二塁走者が三塁を回って本塁を狙い、右翼手は本塁に好送球をしたにも関わらず、本塁が際どいタイミングとなり走者が正しいスライディングで捕手と接触したが為に捕手が送球を捕らえることができずボールが転がり、それを見て打者走者が二塁まで進んだとします。
 この場合、公式記録員は打者走者の二塁進塁について「ミスプレイはないけれど…」と思いながらも右翼手に失策を記録します。なぜなら公式記録員は野球規則にあるように「走者の進塁についてその原因を明らかにしなければならない」からです。

 ここで、ランキングに戻ります。セ・リーグの守備率1位は、歴代の名外野手がいる中で、現役の平田良介選手(中)です。平田選手といえば、応援歌にもあった「竜の主砲」のように打のイメージが強いですが、今まで1096試合に出場して2005の守備機会があった中で10しか失策をしておらず、実は堅実な守備力と、好送球が変転するといったことの少ない強運の持ち主とも言えるのではないでしょうか。

 さらにランキングの特徴として、セ・リーグでは2位が丸佳浩選手(巨)、3位が大島洋平選手(中)とトップ3を現役選手が占め、青木宣親選手(ヤ)も9位と現役選手が多くランクインしているのに対し、パ・リーグでは現役選手は2位の栗山巧選手(西)のみとなっています。もしかしたら、緻密な野球のセ・リーグ、豪快な野球のパ・リーグと象徴的に言われるのは、このあたりのデータが裏付けの一つと言えるのかもしれません。

 今回のコラムでは、普段はあまり注目されることの少ない守備率に目を向けてみました。外野手の守備というと、イチローさんの代名詞であるレーザービームといったような「肩の強さ」に目が行きがちですが、公式記録員の私としては守備率向上の条件は「送球の正確さ」、そして「強運の持ち主」であることが実は重要な要素と言えると考えています。

※なお、イチローさんはオリックスで外野手として934試合出場の為、今回のランキングには載っていませんが、守備率は.991です。

【NPB公式記録員 伊藤亮】