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【コラム】30試合連続安打の球団記録に並んだ阪神・近本光司、オリックスバッテリーと対戦してつかんだ新たな境地

 猛虎の背番号5が放ったメモリアル安打が、打線の着火点となった。7月6日の広島戦(甲子園)、2点ビハインドの4回裏二死から近本光司が打席に立った。そこまで阪神打線が無安打に抑えられていた床田寛樹の147キロ直球をとらえた当たりは中前へ。2011年にマット・マートンが記録した30試合連続安打の球団記録に並び、さらに球団史上3人目の新人年から4年連続100安打となる一打が号砲となり、阪神打線は一挙3得点で逆転に成功。今季、12試合目にして広島戦で初勝利を飾った。

 だが、周囲の喧騒をよそに近本は「あまり記録にこだわりがないので、正直どうでもいいんですよ。ただ、毎試合ヒットを打ちたい。それを積み重ねた結果が記録になったと思います」とあくまで冷静だった。ヒットを生み出すことのみに集中している安打製造機。30試合の間にも進化のヒントをつかんだ瞬間があったという。6月10日、オリックス戦(京セラD大阪)のことだ。相手先発は左腕の山﨑福也。真っすぐの配球割合が5割を切り、チェンジアップ、カーブ、スライダーが主の変化球投手だ。それでも近本は「真っすぐ待ち」で打席に立っていた。そのタイミングで打ちにいき、スライダーが来てファウルになった際、マスクをかぶる伏見寅威が「やっぱりスライダーを狙うよね」とつぶやいたことが、頭の中で引っ掛かった。

 「僕は真っすぐのタイミングで打ちにいってスライダーに合わせたのに『そう感じるんや。キャッチャーは打者のタイミングの反応を見ているだな』とあらためて思ったんです。ということは、『今はスライダーを狙っていますよ』とキャッチャーに思わせるようなタイミングと打ち方をすれば、絞り球を見破られないのか、と思ったんです」

 では、それをどこで調整するのか――。打者が真っすぐだと判断するのはピッチャーが投げてから0.4秒ぐらいだ。そこからスライダーは少しあと、カーブはそれよりもさらに遅くという感じでタイミングがズレていく。ならば真っすぐのタイミングのまま打ち始めていく中で、踏み出していく右足をうまく使って調整しようと考えたという。

 「例えばスライダーのときは一瞬、右足の裏を見せることで少し間がつくれます。カーブのときは右足内転筋に力というか、緊張させてためをつくる。そこからバットを振り出していけば、ファウルになったときに、キャッチャーは何を狙っているのか分からなくなるだろう、と。伏見さんの言葉から、そこを意識して練習に取り組みましたし、多分今はそれができています。オリックスバッテリーと対戦していなかったら、もしかして30試合連続の安打記録はできなかったかもしれませんね」

 翌日の同カードは無安打に終わり、連続試合安打がストップ。球団新記録樹立とはならなかったが、近本は晴れ晴れとした表情で「明日から新しい自分に挑戦できる。楽しみです」と口にした。それは悔しさを押し隠しているわけではなく、本音だろう。新たなステージに上がった男は、また進化したバッティングを見せてくれるはずだ。

【文責:週刊ベースボール】