【コラム】“やってくれる男”オリックス・宮城大弥、“体内時計”で球速を操る左腕が首位直接対決で好投
「宮城はやってくれる男なので朝、しっかりプレッシャーをかけておきます。最後はみんなで優勝しましょう!」
首位・ソフトバンクとの直接対決初戦で完封勝利を飾った山本由伸から強烈なハッパを掛けられた。逆転優勝へ負けられない3連戦。9月18日の2戦目(京セラD大阪)、オリックスの先発マウンドに立ったのは宮城大弥だった。自身初の中5日登板。21歳左腕は持てる力を発揮した。
初回、先頭の周東佑京に13球粘られながら見逃し三振に仕留めると、波に乗る。最速149キロのストレートと100キロ台、90キロ台のカーブで緩急をつけ、ソフトバンク打線を抑え込む。4回には二死満塁のピンチを迎えたが、カウント2-1から牧原大成をカーブを引っ掛けさせ一ゴロに。5回限りでマウンドを降りたが、その後は4人のリリーフ投手がスコアボードにゼロを刻んで完封リレー。2対0で勝利を飾り、ソフトバンクに1ゲーム差に迫った。
「緊張感のある試合でしたけど、しっかり先頭打者を打ち取るという気持ちで集中して入ることができたので良かったです。毎イニング緊張しましたし、雰囲気も緊張感もある試合でしたが、5回まででしたけど自分の投球ができたので良かったです」
昨季13勝をマークして新人王を獲得した宮城。今季もここまで11勝を挙げるなど山本とともに投手陣をけん引してきた。“2年目のジンクス”を感じさせない投球。昨季までは打者の左右に応じて、投球プレートの踏む位置を変更していたが、今季からプレート位置を一塁側に固定。確固たる“軸”を作ったことも進化の証しだ。21歳ながら風格を漂わせる左腕。さらに優れた“体内時計”で球速を操っている点も特長の一つだ。
「スピードガンをメチャクチャ見ます。今のボールが145キロで、さっきのは139キロか……とか。投げた感覚と数字を合わせる感じです」
直球、変化球のそれぞれ数値が理解できているから、得意のスローカーブを投じても腕の振りが緩まない。準備も万端だ。球場により表示速度に微増、微減があるそうだが「前日に先発した投手に数値の感覚を聞きます」と抜かりがない。
グラブにもこだわりがある。求めるのは「硬いグラブ」だ。1年目は柔らかいグラブが好みだったが、「捕球のときに痛くて(笑)。それに握っている感じも欲しくなったんです」と話す。2年目の昨季から硬い革に変更したが、“握っている感じ”とは捕球時ではなく投球時のテークバックの際にグラブに力を入れるときの感覚だ。「握っている感じが出れば力の入れ具合も分かる。フォームで言う“カベ”もしっかりつくれる」と硬さにこだわる理由は機能面にもある。
激しさが増すオリックスとソフトバンクの優勝争い。「もっとチームがいい波に乗れるように残り試合頑張っていきたいです」と誓う宮城。チームがリーグ連覇を成し遂げるために、“やってくれる男”が真価を発揮していく。
【文責:週刊ベースボール】