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【コラム】開幕5戦5勝の快投を見せる阪神・大竹耕太郎、“ポジティブなヤツ”の言葉で能力が開花

 雨が降り注ぐ悪コンディションの甲子園のマウンド。しかし、先発マウンドに立った阪神・大竹耕太郎は意に介さない。自らを「砂漠に生えている植物」に置き換えた。「『水を欲していた!』というマインドでいました。逆にワクワクする感じをイメージしましたね」。5月13日のDeNA戦(甲子園)。3回二死二塁でソトを右飛に打ち取ったかに思われたが、右前にポトリと落ちる不運な当たりとなり先制点を許した。だが、直後に味方打線が4点を奪って逆転。その後は持ち前の丁寧な投球で走者を出しても慌てずに対処した。6回4安打1失点でハーラートップの5勝目。阪神の先発投手で開幕5戦5勝は1937年秋の御園生崇男、2004年の福原忍に次ぐ球団史上3人目の快挙となった。

 この勝利は早大の先輩・岡田彰布監督の通算600勝でもあった。昨オフ、現役ドラフトで阪神に移籍した大竹だが、指揮官はキャンプから「これならいける」という感触があったという。「何も早大の後輩だからではない。あのキレのあるストレートと、ピッチングのうまさ。スタートさえうまくいけば、十分に先発ローテーションに入れる。そんなインパクトがあった」。早大では通算11勝をマークし、2018年育成ドラフト4位でソフトバンクへ入団した大竹。18年7月末に支配下登録され、19年に開幕から先発ローテに入り5勝を挙げたが、その後は故障に見舞われるなど伸び悩む。21、22年は未勝利に終わっていたが、岡田監督はその潜在能力を買っていた。

 それにしても、なぜ阪神で飛躍を果たし、勝利を重ねる投球ができるようになったのか。本人曰く「どんなときでも自分を客観的に見られるようになった」ことが大きいという。

 「今は自分自身と違う2人の自分が僕の意識の中にいるんです。イメージは僕を頂点にして三角形の形で、下の左右にネガティブな自分とポジティブな自分がいます。例えばチームが連敗して自分の登板が回ってきたときに、『怖いな、打たれたらどうしよう』とネガティブなヤツが僕にささやいてきている、という感覚です。それに対し、もう一人のポジティブなヤツが『でも、連敗を止めたらすごいじゃん』とネガティブなヤツに言うんです。そして、ポジティブなヤツの言うことを三角形の頂点にいる自分自身が採用していく感覚です」

 常にポジティブな感覚を自分の中で持つことで投球が変わった。

 「今までは『ここでチェンジアップが高めに抜けたら長打を打たれるな』と思い、『そうしないようにしよう』とネガティブになり、実際に高めに浮いて打たれることが多かったんです。ところが今では『低めに投げれば、抑えられるから大丈夫』とポジティブなヤツの言葉を聞いて投げる。すると、しっかりと腕が振れ、低めに行くようになりました」

 マインドの変化が功を奏し、首位争いのチームで主役を演じている大竹。しかし、これからも気負わずに自分の役割を徹することに集中する。

 「1年間、一軍で楽しく投げ続けたいですし、『結果を出さなければ』という気持ちだと切羽詰まりそうなので『気が付いたらシーズンが終わっていた』という感じで。楽しみながらマウンドに立っていたいです」

 軽やかな気持ちでシーズンを駆け抜ける背番号49。それが、最高の結果をもたらしてくれるはずだ。

【文責:週刊ベースボール】