【コラム】チームの命運握る新たなキーマンは?/パ・リーグ新人事情
リーグ4連覇を狙うオリックスは攻守で戦力が充実している。昨秋のドラフトではドラフト4位まで高校生を指名。1位の大型遊撃手・横山聖哉を筆頭に好素材の獲得に成功した。2、3年後を見据えてじっくり育てる方針だ。1年目から即戦力として期待されるのが、下位指名した社会人出身の投手たち。ドラフト5位の髙島泰都はオープン戦3試合で5イニング連続無失点と安定感が際立つ(3月21日現在)。直球が右打者の内側に食い込む独特の球質でチェンジアップも精度が高い。ロングリリーフが可能で貴重な存在になりそうだ。ドラフト6位の古田島成龍は球威十分の直球、チェンジアップを織り交ぜて緩急を効果的に使い、スタミナ十分。救援だけでなく、先発に抜擢される可能性が十分にある。ドラフト7位の権田琉成は角度のある直球と多彩な変化球を操り、三振奪取能力が高い。1学年上の山﨑颯一郎、宇田川優希のように才能を開花させられるか。
ロッテはドラフト1位で3度の抽選を外し、上田希由翔を指名。コンタクト能力が高く、右中間や左中間を射抜く強打者はチームの補強ポイントに合致する。1年目から攻守の中心を担う即戦力として活躍できるか。2位の大谷輝龍は最速159キロの直球を武器に、三振の山を築く剛腕。変化球の質を高めるのが課題だが、伸びしろ十分で将来の守護神として期待される。今年はセットアッパーで一軍定着を目指す。3位の木村優人、4位の早坂響は高卒入団。木村は直球、変化球、フィールディング能力と総合力が高く、数年後に先発ローテーションで稼働してほしい。早坂は幕張総合高で高校2年の5月まで捕手だったが、投手に転向すると最速151キロを計測するなど急成長。まだまだ覚えなければいけないことが多いが、大きな可能性を秘めている。5位の寺地隆成は高校屈指の捕手。強打が最大の武器で、高いコンタクト能力と打撃フォームが近藤健介(ソフトバンク)に重なる。
3年連続優勝から遠ざかっているソフトバンクは、ドラフト1位で高校No.1左腕・前田悠伍を指名。高卒だがすべての能力が高水準で、一軍のマウンドに立つ時期は早いかもしれない。宮城大弥(オリックス)のような左腕エースになってほしい。ドラフト2位右腕の岩井俊介は150キロを超える直球とスラーブを武器に三振を奪う。救援陣の層は厚いが、割って入りたい。ドラフト4位の村田賢一はファームの開幕投手を務め、6回途中まで1失点と試合をつくった。ソフトバンクは剛速球が持ち味の投手が多い中、多彩な変化球と抜群の制球力で打たせて取るスタイルで、ゲームメーク能力が高い。一軍で先発のチャンスが与えられる日はそう遠くないだろう。ドラフト5位の澤柳亮太郎はオープン戦初登板となった3月19日の阪神戦(PayPayドーム)で1回3失点と結果を出せなかったが、球質は悪くない。150キロを越える直球と落差の大きいカーブを磨けば、おのずと結果がついてくる。
今江敏晃監督が就任した楽天は若返りの時期を迎えている。若手が1人でも多く出てきてほしいチーム状況で、新人たちはチャンスだ。ドラフト1位左腕の古謝樹は球の出どころの見えづらい独特のフォームから最速153キロの直球とスライダー、チェンジアップ、ツーシームを投げ込む。開幕で先発ローテーション入りは厳しい状況だが、ファームで好投を続ければ、早期の一軍昇格は十分に考えられる。オープン戦で評価を高めているのが、ドラフト5位の松田啄磨。オープン戦4試合で計9回2失点と好投を続けている(3月21日現在)。身長186センチの長身から投げ下ろす直球と縦に大きく割れるカーブがセールスポイントで、走者を背負っても制球力が安定している。細身の体格とカーブを操る投球スタイルはあこがれの岸孝之と重なる。ドラフト6位の中島大輔は俊足巧打の外野手。青学大、大学日本代表で主将を務めたキャプテンシーも魅力で、熾烈な定位置争いに加わりたい。
西武はドラフト1位で大学No.1左腕の武内夏暉を獲得。実戦登板で完成度の高さを見せており、先発陣の層がさらに厚くなりそうだ。シーズンを通じて先発ローテーションで稼働すれば、新人王の有力候補であることは間違いない。オープン戦で強烈に存在をアピールしたのが、ドラフト7位右腕の糸川亮太だ。3月15日のソフトバンク戦(PayPayドーム)で近藤健介、ウォーカー、中村晃とクリーンアップを三者連続三振。キレのある直球、スライダーに加え、伝家の宝刀・シンカーで翻弄した。内角を果敢に突く強心臓も頼もしい。1年目からリリーバーとして登板を重ねたい。ドラフト5位の宮澤太成は最速155キロの直球と、130キロ台後半を計測する落差の大きいフォークが武器。3月13日の中日戦(ベルーナドーム)では1点リードの9回に登板し、無死満塁のピンチを招いたが後続を抑えて無失点で切り抜けた。投球の再現性を高めれば、一軍で十分に通用する。
2年連続最下位から巻き返しを図る日本ハム。ドラフト1位の最速158キロ左腕・細野晴希は制球力を磨く必要がある。完成度を高めれば球界を代表する投手になる可能性を秘めているだけに、焦らずじっくり育てる。大学球界No.1捕手の呼び声が高い進藤勇也は新人で唯一春季キャンプを完走。自慢の強肩を発揮して首脳陣の評価を高めた。打撃で確実性を高め、正捕手の座をつかみたい。ドラフト3位の宮崎一樹は走攻守三拍子そろった大型外野手。春季キャンプ中は新庄剛志監督に外野の守備でマンツーマン指導を受けるなど、期待は大きい。ドラフト4位の明瀬諒介は高校通算49本塁打をマークしたスラッガー。同じ4位指名で高卒入団し、昨季25本塁打とブレークした万波中正という良きお手本がいる。数年後にクリーンアップを担う存在になりたい。ドラフト5位の星野ひのでも高校球界で和製大砲として評価が高かった。明瀬と切磋琢磨し、一軍の舞台を目指す。
【文責:週刊ベースボール】