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【コラム】150キロ超のストレートに食らいつき勝ち越し打、懸命なプレーでVへチームを加速させる広島・矢野雅哉

 一塁ベースを回って、ありったけの雄たけびを上げた。「なんとか(走者を)かえそうと思って打ちました」。8月22日の巨人戦(東京ドーム)、0対1の9回に小園海斗が戸郷翔征から起死回生の同点適時打を放ち追いついた広島。延長10回も一死二、三塁とケラーを攻め立てる。上本崇司は中飛に倒れ、二死となって打席に入ったのは矢野雅哉だった。

 150キロ超のストレートを次々と投じるケラーに対し、矢野はバットをいつもより短く持って食らいつく。カウント1-2からの4、5球目の高めのつり球はファウルでしのぐ。6球目のカーブは外角低めに外れ、続く7球目だった。うなりを上げて投げ込まれた真ん中高めのストレートを左翼へコンパクトにはじき返した。「154キロなんて打ったことないと思うので、びっくりしています」。首位攻防戦で完封負け目前からの2対1の逆転勝利。6年ぶり優勝を目指すチームの底力を示した瞬間だった。

 新井貴浩監督は矢野の成長を感じていた。「追い込まれるまで高めの真っすぐを振り遅れて空振りしていましたが、追い込まれてから対応の仕方を変えて。打席の中で修正できていました」。今季、遊撃のレギュラーを獲得した矢野。8月26日現在、打率.240だが、リーグトップの6三塁打をマークしている。意識しているのは「狙ったボールは1球で仕留める」ことだ。

「開幕からずっと自分の中にあって。前半戦はそれがミスショットになることも多かった。だから、後半戦はより強く、しっかりと、というところに重きを置いています。どうしても甘い球は1打席に1球来るか、いいピッチャーだったらほとんど来ないので、しっかりとらえることができるかを一番に考えて。打球方向とかは特に気にせず、前にはじき返すことだけを考えています」

 持ち前の遊撃守備には磨きがかかっている。再三の好守備に球場中が沸くことも多い。「ゴールデン・グラブ賞」最有力の呼び声も高い。ただ、本人の中ではファインプレーに対するとらえ方に変化が生じているという。

「サヨナラされそうな場面とかで、いいプレーで失点を防ぐことができたら自分の中でも『やったな!』と思うんですけど、それ以外は別に……。去年だったらファインプレーをしたら自分の中で何か(湧き)上がってくるものがあったんですけど、今は一番に『どうしたらピッチャーを助けられるか』というところがある。考えているのは自分のことではないので。どう守るかという考えになっている中では、ファインプレーをしても別に……なんですよね」

 現在、広島は首位に立っているが、2位・巨人とはわずか1ゲーム差。優勝に向けて残り試合も少なくなる中、ワンプレーの重みが増していくのは間違いない。

「必死に泥臭くやるのが僕のスタイル。チームの流れが悪いときでも、自分のプレー一つで流れは変えられます。それができれば、チームの中でも存在感が出てくる。チームが勝てるように、もっともっとそれを出していきたいです」

 必死に守って、必死に打って、必死に走る。背番号61の懸命な姿がチームを頂点へと加速させていく。

【文責:週刊ベースボール】