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【コラム】お立ち台で楽天・浅村栄斗の目からあふれ出た涙、苦しみを乗り越えて達成した平成生まれ初の2000安打

「長かったですし、苦しかったです」

 野球で泣いた記憶はないという楽天・浅村栄斗がお立ち台であふれる涙を止めることができなかった。5月24日の日本ハム戦、満員御礼となった本拠地・楽天モバイルでの一戦で浅村は平成生まれでは初の2000安打を達成。史上56人目、34歳6カ月での到達は歴代7位の年少記録となった。

 大記録にたどり着くまでの道のりは平坦ではなかった。「うれしい記録のはずなのに、いつの間にか苦しいな、に変わって……しんどくなって。それからはプレッシャーをものすごく感じていました」。偉業まで残り36本と迫って開幕した今シーズン。開幕2戦目から8試合連続安打を放つなど順調にその数を減らしていき、4月22日の日本ハム戦(エスコンF)では300本塁打を達成。4月27日のソフトバンク戦(楽天モバイル)では2安打を放ち、1991安打。ついに残り10本を切った。だが、ここから雲行きは怪しくなっていく。

「残り10本を切ったあたりから重圧もありましたし、それと同時に調子も少し落ちてきてモヤモヤした気持ちはありました」。4月29日からは自己ワーストの35打席ノーヒット。5月15日に残り2本としてからは17打席、快音は聞かれなかった。さらに5月20日の西武戦(盛岡)で今季初のスタメン落ち。出場機会は訪れず、2015年8月8日から続けてきた連続試合出場が1346試合で途絶えた。試合に出ることにこだわってきた男に訪れた試練だったが、「毎日試合があるので、切り替えてやらないとチームに迷惑がかかる」。必死に前を向いて、目の前の打席に集中した。

 5月22日の西武戦(楽天モバイル)でスタメン復帰すると、翌日の日本ハム戦(楽天モバイル)の第1打席で1999本目のヒットを放って王手をかけた。そして迎えた24日、初回の第1打席、一死一塁で打席に立つと一走・小深田大翔が二盗を決め、先制のチャンスに。「最近はなかなか先制点が取れていなかった中での初回の得点圏だったので、あと1本で2000本というよりも、とにかくチームのために先制したい、と。それしか考えていなかったですね」。カウント2-2からの5球目、山﨑福也が投じた外角のカットボールをとらえた一撃は一、二塁間を抜け右前へ。決勝点となる先制打で2000安打を達成したが、「理想的なバッティングができたと思います。右方向にしっかり強い打球を打つということを若いときから心掛けてやってきたので、2000本目も自分なりのいいヒットだったなと思います」と満足げな表情を浮かべた。

 自身の原点と振り返るのは厳しい練習の中で野球の基礎と野球人としての土台を作った大阪桐蔭高での日々。同校出身では初の2000安打達成者にもなった。「大阪桐蔭の野球を学んでいなければ今の自分はいないと思います。偉大なOBがたくさんいる中で1人目ということは率直にすごくうれしいですし、大阪桐蔭と聞いてすぐに名前が挙がる偉大な選手になれるように、もっともっと努力していきたい」と新たな決意を抱く。

 もちろん背番号3の最大の目標は優勝だ。「1本を打つ難しさもすごく感じていますが、とにかく1本でも多くチームに貢献できるように頑張りたいなと思います」。まだ34歳。経験を力に変えて、フルスイングを貫いて東北の地に歓喜をもたらす。

【文責:週刊ベースボール】