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【コラム】病気と闘う子どもに夢と希望を与える「村神様」、ヤクルト四番・村上宗隆が3発のバックスクリーン弾

 まさに「村神様」の活躍だった。8月30日の広島戦(神宮)、ヤクルトの四番・村上宗隆が衝撃の1試合3本塁打を放った。まずは先頭で打席に入った2回だ。カウント1-0からの2球目、高橋昂也の外角高めカットボールをひっぱたく。打球はバックスクリーンへたたき込まれた130メートル弾。1点差に追い上げると、今度は3回だ。2対2の同点に追いつき、さらに二死三塁のチャンスで再び高橋から快音を響かせた。カウント1-1からの3球目、真ん中ストレートをジャストミート。打球は再びセンター方向へと舞い上がっていく。打った瞬間、スタンドインを確信する勝ち越し2ランとなった。

 最後は8回一死だ。カウント3-1から辻大雅のストレートにバットを一閃。観客の大歓声に後押しされるかのように打球がグングン伸びていく。3本目もバックスクリーンに飛び込む一発。衝撃のバックスクリーン3連発に髙津臣吾監督も「すごい。3本すべてがセンター方向というのが評価できる」と目を丸くした。ヒーローインタビューでは山野太一が「本当に神様だと思って見ていました」と感嘆し、アナウンサーから「神様です!」と振られたが、本人は「人間の村上宗隆です」。球場内は笑いに包まれたが、続けて強い思いを持ってグランドに立っていたことを明かした。

「今日は小児がんナイターということで。僕は大きく生まれて、すごく恵まれていますけど、本当に小さい体で頑張っている姿に刺激をもらっています。そういう子どもたちになんとか夢と希望、そして元気を与えらえるようにと臨みました」

 この日は小児がんと闘う子どもたちを招待する「ゴールドリボンナイター」として開催。子どもや家族ら約50人が観戦し、試合前には村上の大ファンだという中学1年の福沢尚翔君が背番号55のユニフォームをまとい始球式を務めた。その姿を目に焼き付けていた村上。本塁打を打つたびに左手首につけた特別仕様の金色のリストバンドをテレビカメラに向かって指さした。

「こうして野球ができることを感謝しないといけない。社会人として、しっかりした人間になりたい。僕自身も刺激を与えられるように頑張りたいです」

 プロ8年目の今季は3月に上半身を痛めて開幕二軍スタートとなった。リハビリ期間を経て、4月17日の阪神戦(神宮)で一軍復帰も同戦で患部の痛みが再発した。ベンチで苦悶の表情を浮かべた村上。翌18日には出場選手登録を抹消されて再びリハビリ組へ回った。「前回のケガよりひどかったので3回目はダメだと思います。前回は少し焦りもありましたけど、今回はしっかり素直にトレーナーの方とコミュニケーションを取って、やっている」と慎重に段階を踏んだ。

 焦る気持ちを抑え、再び一軍の舞台に戻ってきたのは7月29日だった。そこからの爆発力がすごい。8月31日まで30試合に出場して14本塁打。驚異的なペースでアーチを量産している。タイミングをしっかり取り、スイングにブレがない。大爆発がこれからも続く予感が漂う。シーズンは最終盤に突入しているが、最後まで1球に集中してバットを振る。村上が架けるアーチに夢を見る、すべての野球ファンのために――。

【文責:週刊ベースボール】