【セCSファイナルS展望】圧倒的な強さでリーグ優勝の阪神、DeNAは2年連続の下克上を狙う
セ・リーグの「2025 JERA クライマックスシリーズ セ」ファイナルステージが10月15日から行われ、1位・阪神が本拠地・阪神甲子園球場でファーストステージを突破した2位・DeNAを迎え撃つ。
今年の阪神はシーズン中盤から首位を独走し、9月7日にNPB史上最速のリーグ優勝を果たした。85勝54敗4分、勝率.612で2位のDeNAに13ゲームの大差をつけ、攻守に隙のない戦いぶりだった。
目を見張る活躍ぶりでV奪回に大きく貢献したのが、佐藤輝明だった。四番に座り、40本塁打、102打点で2冠を獲得。広い本拠地・甲子園でアーチを量産するのは難しい。阪神の選手が本塁打王を獲得したのは1986年のバース以来39年ぶりの快挙だった。ボール球に手を出さなくなったことで好不調の波が少なくなり、広角に長打を量産したが、五番を打つ大山悠輔の存在も大きい。得点圏打率.316と勝負強さが光るため、相手バッテリーは佐藤輝を四球で歩かせて走者をためるわけにはいかない。2度目の最高出塁率のタイトル獲得はならなかったが、出塁率.363はリーグ2位と立派な数字だ。三番の森下翔太も打率.275、23本塁打、89打点と打撃3部門で自己最高の数字をマーク。6度目の盗塁王を獲得した近本光司、首位打者争いを繰り広げた中野拓夢の一、二番がチャンスメークし、和製クリーンアップが走者をかえす。この得点パターンで試合の主導権を握った。
投手陣も盤石だった。チーム防御率2.21はリーグ断トツのトップ。最優秀防御率に輝いた才木浩人、最多勝を獲得した村上頌樹を軸に、デュプランティエ、伊原陵人、大竹耕太郎、伊藤将司、髙橋遥人とゲームメーク能力が高い投手が豊富にそろっている。救援陣は石井大智がNPB新記録となる50試合連続無失点を達成するなど防御率0.17と抜群の安定感を誇ったほか、及川雅貴がリーグトップの66試合登板で46ホールド、防御率0.87をマーク。岩崎優、桐敷拓馬、湯浅京己とキャリアがある投手たちもきっちり稼働した。
藤川球児監督は球団史上初の快挙となる就任1年目でリーグ優勝を達成。その起用法は明確だった。野手陣は大山、中野、佐藤輝、近本、森下を定位置に固定する一方で、遊撃と左翼は実力主義で競わせた。選手のモチベーションが上がっただろう。小幡竜平、熊谷敬宥、髙寺望夢が攻守でアピールした。捕手の起用法も、坂本誠志郎、梅野隆太郎を併用していた岡田彰布前監督の時と変化があった。藤川監督は坂本を正捕手として起用し、108試合で先発マスクをかぶった。巧みな配球術で投手陣を引っ張り、打撃でも規定打席に到達しなかったが、出塁率.357を記録して下位打線の核になった。
ファイナルステージは1戦目が村上、2戦目が才木の先発が有力視される。DeNAとの今季の対戦成績は、村上が3試合登板で1勝1敗、防御率2.57。才木は5試合登板で2勝1敗、防御率1.82。チーム全体では14勝8敗3分と勝ち越している。1勝のアドバンテージがあることに加え、甲子園で阪神ファンの大声援を受けて戦えることは大きなプラスアルファだ。シーズン中と同様に試合の序盤から攻撃的な姿勢で相手を圧倒したい。
DeNAは昨年のレギュラーシーズン3位からCS、日本シリーズを勝ち抜いて日本一に輝いた成功体験がある。今年はCSファーストステージで3位・巨人に2連勝。試合内容も勢いに乗る形だった。初戦は筒香嘉智が2本のアーチを放つなど4安打3打点の大暴れで難敵の相手先発・山﨑伊織を攻略。2戦目は初回にいきなり5失点を喫したが、直後の攻撃で佐野恵太の2ラン、石上泰輝の3ランで同点に。2回以降は膠着状態が続き、同点の延長11回に1点を勝ち越されたが、劇的なフィナーレが待っていた。二死から石上が二安打を放って二盗に成功すると、林琢真が左前にはじき返す同点適時打。さらに、代打・度会隆輝が右前打でつないで好機を広げると、一番の蝦名達夫が三遊間を割るサヨナラ適時打で勝負を決めた。
オースティンは故障で戦列を離れているが、左手親指付け根のじん帯修復手術を受けた牧秀悟がCSから復帰したことで打線に厚みが増している。阪神戦はシーズンの対戦成績で負け越したが、甲子園の対戦は4勝5敗と苦手意識がない。カギを握るのは初戦に先発予定のエース・東克樹だ。今季は14勝8敗、防御率2.19で村上と共に自身2度目の最多勝を獲得。阪神戦は1勝1敗、防御率1.50と抑えている。初戦で白星発進して1勝1敗のタイに戻せば、チーム全体が勢いに乗れる。CSファーストステージの巨人戦では、今年限りで退任が決まった三浦大輔監督の采配がさえ渡った。2年連続下克上に向け、ファイナルステージも用兵術が注目される。
【文責:週刊ベースボール】