【コラム】35歳目前でも進化を止めないオリックス・九里亜蓮、ベテラン右腕を突き動かす「野球が好き」という思い
オリックス・九里亜蓮が、先発投手としての責任を果たした。8月11日の楽天戦(楽天モバイル)で7回5安打1失点、120球の力投で今季8勝目。4回には中島大輔に先制ソロを浴びたものの、そこから崩れることはなかった。横手投げを織り交ぜ、走者がいない場面ではクイック投法、さらには67キロのナックルも披露。フォームや球速、球種を自在に変化させ、相手打線を翻弄した。
「なんとか最少失点で粘れるように投げ切ることができました。選手全員があきらめていません。チームが一つでも上の順位を狙っていくために、勝つしかない」
前回3日の対戦では、2回までに6失点。わずか8日後、今度は7回1失点と見事に雪辱した。岸田護監督も「粘り強く投げてくれた」と称賛。苦しい場面でもマウンドを譲らない九里の存在は、今季もチームを支えている。九里の強さは、球威やスタミナだけではない。状況に応じて投球を変え、豊富な引き出しを使いながら打者を打ち取っていく。その根底にあるのが、先発としての責任感だ。
「先発として上がる以上は、最後までマウンドに立ち続けることを常に考えているので。その気持ちは、どの試合でも変わらないですから」
オリックス移籍2年目。チームを背負う覚悟はマウンド外にも表れる。6月9日のヤクルト戦(京セラD大阪)では先発投手ながら試合前の円陣で声出しを担当。6回1失点と好投した後、志願して中4日で6月14日の阪神戦(京セラD大阪)にも先発した。宮城大弥、山下舜平大らを欠く中、先発ローテーションを支える役割も担っている。8月16日時点で124奪三振はリーグ2位。9月に35歳を迎えるベテランとは思えない存在感だ。
宝刀のチェンジアップを軸に、スイーパー、カットボール、シンカー、ナックルカーブ、シュート、フォークなど多彩な変化球を操る。楽天戦で見せた横手投げやクイック、67キロのナックルもその一つ。経験豊富な捕手の若月健矢も「特殊であまりいない投手。勉強させてもらっています」と語る。
では、なぜ九里は今も新しい投球に挑み続けるのか。現状維持に満足せず、常にレベルアップするためには、野球を好きであり続け、さまざまなことを学ぶことが必要だと考えている。「新しいことにチャレンジしたい」という姿勢が35歳を目前にしても成長を続ける原動力だ。春季キャンプ初日にはブルペンで350球を投げ込んだ。球数を多く投げることで身体に負荷をかけ、シーズン終盤の疲労にも対応できるよう準備する。登板間隔を詰めて投げることを好むのも長年の経験から自分の身体と投球を理解しているからこそ、だ。
昨季、海外FA権を行使して広島からオリックスへ移籍すると、チームトップの11勝、164回1/3を記録。新天地でも先発の柱として結果を残した。移籍2年目の今季も、苦しい台所事情の中でローテーションを守り続ける。経験を重ねても、九里の野球への好奇心が薄れることはない。投球にさまざまな変化を加え、試行錯誤を重ねる。その姿勢を支えているのは、何よりも「投げることが好き」という純粋な気持ちだ。35歳を目前にしても、九里は楽しみながら自らの可能性を追い求めている。
【文責:週刊ベースボール】