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【コラム】プロ野球新40試合連続無失点の阪神・石井大智、工業系高専出身の“頭脳”が魅せる快投

 託されたミッションは三番から始まる打線を封じることだった。8月17日の巨人戦(東京ドーム)、3対1と阪神リードで迎えた8回裏にマウンドへ上がった石井大智。三番・泉口友汰を中飛に抑えたあと、四番・岡本和真はショートへの内野安打で出塁を許したが慌てない。五番・キャベッジは見逃し三振、六番・岸田行倫は右飛に打ち取り、クローザー・岩崎優へバトンを渡す無失点投球。スコアボードにゼロを刻んで、2021年に平良海馬(西武)が樹立したプロ野球記録を更新する40試合連続無失点を達成した。

「今日の試合はすごく意地と意地のぶつかり合いというか、すごくいい試合だなと思いながらブルペンで見ていたので。点を取ってくれたので、自分の仕事ができたらなと思ってマウンドに上がりました。(記録達成は)実感していないかもしれないですし、実感することはないかもしれない。(40試合の重みは?)重みというか、1試合1試合頑張ってきて。日々守ってくださる野手の皆さんにすごく感謝したいと思います」

 プロ野球初の高専卒業選手である石井。秋田工高専で5年間過ごしたあと、野球をあきらめられず四国IL/高知のユニフォームに袖を通した。四国の地で3年間腕を磨き、20年秋のドラフトで阪神から8位指名。支配下全体では最後となる74番目に名前を呼ばれた。1年目の2021年から2年連続18試合に登板すると、23年は44試合登板で1勝1敗19ホールド、防御率1.35をマーク。リードした状況、同点、ビハインドの場面とあらゆる試合展開で起用され、黙々とアウトを重ねた。クライマックスシリーズ、日本シリーズでも計6試合登板で無失点の好投を見せ、38年ぶりの日本一に大きく貢献した。昨年も56試合に登板し、4勝1敗1セーブ30ホールド、防御率1.48をマーク。今年は時にクローザーを担いながら、43イニングを投げ失点はわずか1と快投を続けている。

 身長175センチとプロ野球選手としては小柄ながら150キロを超えるストレートを投げ込む。工業系高専出身者らしく、フォームをつくり上げる際の考え方も理論的だ。

「学生のときは物理が得意でしたが、ピッチングを“力積”で考えると、パワーを最大限に出すには“力×時間”なんです。一人の人が持っているパワーは決まっていますが、最大限にそのパワーを出すのは時間なんです。その時間が長ければ長いほど多くのパワーを引き出せる。プレートから右足を離さず、後ろ軸にパワーをためながら、左足に重心をうまく伝えていく。その時間が長ければ長いほど、リリースの瞬間に下半身のパワー、エネルギーがボールに伝わるということだと思っています」

 マウンドで表情を変えずに腕を振り続ける冷静沈着な背番号69だが、周囲への感謝は欠かさない。四国IL/高知のホーム開幕2戦目となる4月6日のソフトバンク三軍戦(高知市)は、「石井大智プレゼンツ」とうたう冠試合で開催。阪神入団1年目からバナー広告の出稿、公式球協賛など、古巣への協力を続けている。

 藤川球児監督が「チームの心臓」と呼ぶ中継ぎ陣。8月18日現在、優勝へのマジック22と頂点へ突き進む阪神の原動力となっている。その中心にいる石井。2年ぶりの歓喜に向けて、これからも目の前の登板に集中してゼロを積み重ねる。

【文責:週刊ベースボール】