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日本野球機構オフィシャルサイト

NPBアンチ・ドーピングガイド2024

8.大切な日常生活 -ドーピング検査で陽性とならない心がけ

 「今日の試合後、ドーピング検査をします」といわれてから、急に何かできるものではありません。だからこそ、日々の生活、つまり日常での注意が大切になります。

 「自分はドーピングなんかしていない」と思っていても、ドーピング検査で禁止物質が検出されることは「ありえる」のです。

 たとえば、「これは大丈夫」と思って使っている薬やサプリメントに、実はドーピング禁止物質が含まれていたということがあります。

 また、スポーツドリンクや水であっても、気をつけていないと、だれかが禁止物質をひそかに入れないともかぎりません。

 この項では、こういった日常生活で注意すべきことをあげてみました。

薬について

 頭痛、腹痛、風邪などの病気やケガで薬を使うのは一般的なことです。病院など医療機関で薬をもらうこともあれば、薬局で購入することもあるでしょう。みなさんが使う可能性のある薬にドーピング禁止物質が含まれていることがあります。

 禁止物質を含む薬は飲み薬だけではありません。塗り薬、貼り薬、吸入薬、坐薬、そして、注射薬など、薬には禁止物質が入っているかもしれないということを常に意識する必要があります。

 『選手手帳』に「使ってよい薬のリスト」、「特に気をつけたい市販薬」の一覧を掲載しましたので、参照してください。購入、使用する場合は、必ず問題がないかどうかたしかめてからにしましょう。しかし、自分ではよくわからないことも多いので、薬については、トレーナーかドクターに確認してから使用するようにしてください。

注意が必要なもの

〔風邪薬〕

 市販の風邪薬(総合感冒薬)の多くには禁止物質であるメチルエフェドリン(麻黄)等が含まれています。家の薬箱の中に入っていたり、だれかが親切でくれる場合もあります。「せっかくだから」と安易な気持ちで使うと、ドーピング検査で禁止物質が検出されることになりますので、十分注意してください。

〔せきどめ、タンの薬〕

 病院でもらう薬、市販薬、どちらにも気管支を広げる薬(ベータ2作用薬)、メチルエフェドリン(麻黄)などの禁止物質が含まれている薬があります。特に気管支を広げる薬は、一部の吸入薬を除いてすべて禁止となっていますので、喘息や風邪のひどい咳で処方される咳止めは要注意です。市販薬では、飲み薬の他に咳をしずめるトローチやのど飴にメチルエフェドリンを含むものがあるので注意してください。

〔花粉症の薬〕

 花粉症の治療薬としてしばしば糖質コルチコイド(副腎皮質ステロイド)の全身投与が行われることがありますが、これは禁止されていますので注意してください。「糖質コルチコイドの筋肉注射」および「セレスタミンの内服」はドーピングになります。ただし、糖質コルチコイドの入っている点眼薬や点鼻薬は使用可能です。花粉症の選手はシーズン前から抗アレルギー薬などを予防的に投与し、症状がひどい場合には糖質コルチコイド入りの点眼薬や点鼻薬で対処するようにしてください。但し、抗アレルギー薬の中にも使用できないものがありますので、必ず確認してください。

〔胃腸薬〕

 市販の胃腸薬の一部には漢方薬のホミカやその抽出成分であるストリキニーネを含むものがあります。

〔滋養強壮薬〕

 「元気になるから」と使う人がいますが、蛋白同化剤(テストステロン)やストリキニーネなどが含まれている可能性があります。プロ野球選手は使用しないほうがよいでしょう。

〔毛髪・体毛用薬〕

 塗る育毛剤の中には禁止物質であるテストステロン(男性ホルモン)が含まれていることがあり、それによると思われる陽性事例も報告されていますので十分に注意してください。なお、飲む育毛剤として病院で処方されるフィナステリド(プロペシア)などは使用することができます。

〔漢方薬〕

 「漢方薬は大丈夫だろう」と考える人もいますが、漢方薬にも禁止物質が含まれるものがあります。たとえば風邪や咳、鼻水の症状があるときに使われる葛根湯(かっこんとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)という漢方薬には禁止物質であるエフェドリンを含む麻黄(まおう)が入っています。

 また、禁止物質を含まない漢方薬であっても、原材料は、動植物や天然物から由来しており、すべての含有物質が明らかになっているわけではないので、禁止物質が完全に入っていないことを確認できません。

 その他、難聴、めまい、痛風(つうふう)、高血圧などで用いる薬にも禁止物質が含まれていることがありますので、注意してください。病院などで処方してもらった場合は、診察してくれた医師が、スポーツドクターでない場合、ドーピングについてわからないことが多いので、チームドクターなど詳しい人に聞いてから使用してください。

 また、前述のとおり、親しい人であっても、だれであっても「この薬、よく効くよ」とすすめられた場合も安易に使用してはいけません。「本当に大丈夫か?」といったんは疑う姿勢が必要です。自分で判断できることではないので、やはり専門のドクターに相談してからにしましょう。

サプリメント(栄養補助食品)について

 一般的にサプリメントと呼ばれる栄養補助食品は、あくまで「食品」です。食品の場合すべての含有成分を表示する義務はありません。ということは、そのサプリメントに表示されていない成分を含む可能性があり、その成分が禁止物質である場合もあるということです。特に海外で製造されたサプリメントはこれらの危険性が高いといわれています。

 また一見、日本製のサプリメントにみえるものでも海外で製造されたサプリメントを輸入して日本で製品化し販売している場合があります。つまり外観は日本製、中身(サプリメントそのもの)は海外製というものです。実際に2016~2019年に海外製サプリメントを使用して、表示されていない成分が原因でドーピング違反になった事例が日本で4件起こっています。そのうちの2件はビタミン、ミネラルを主成分とするサプリメントでした。また、過去に同じメーカーの同じ製品を使用していてドーピング検査陰性だったにもかかわらず、別の箱(別ロット)の同製品を使用して陽性となりました。

 このようなサプリメントの汚染が原因の違反であっても選手自身の責任となり、最低でもその時出場した試合の成績がすべて抹消されてしまいます。

 特に海外で製造されたサプリメントは汚染の可能性が高いといわれていますので、注意してください。アメリカのアンチ・ドーピング機構のホームページに表示されていない禁止物質を含んでいるサプリメントが掲載されていますので参考にしてください。(個人登録必須)

「Supplement Connect ⇒ High Risk List」
https://www.usada.org/athletes/substances/supplement-connect/high-risk-list/

 サプリメントを使用したい気持ちは十分にわかりますが、違反になり得る危険性があり、その責任は自身に降りかかることを忘れないでください。

口にするものは自分でしっかり管理

 めったに起こることではありませんが、だれかがあなたを「ドーピング陽性者」にしようと思っているかもしれません。残念ながら、ライバルのドリンクに禁止物質を混入してライバルが違反となる事例がこの日本で発生しています。自分がのむスポーツドリンクやお茶、水などのペットボトルはしっかり自分で管理してください。

 たとえば、不特定多数の人間が出入りするような施設でトレーニングを行う場合、自分が使用しているペットボトルなどをその辺に無造作に置いておくのは危険です。だれか信頼できる人に預けるか、だれも手を触れることができないように注意する必要があります。「そんなことをする人はいないだろう」と思うかもしれませんが、何が起こるかわからないと考えるリスクマネジメントが必要です。あまり人を疑うことはよいことではありませんが、用心のうえにも用心が大切です。