ヤクルトが初戦を落としたあとに3連勝。王手をかけたSMBC日本シリーズ2021は、11月25日に第5戦を迎えた。崖っぷちに追い込まれたオリックスは左腕・山﨑福也を先発に抜擢。ヤクルトは原樹理が先発で臨んだこの一戦は、過去4試合と同様に1点を競り合う激しい攻防が繰り広げられた。
先制点はヤクルト。2回に先頭打者・サンタナが四球で出塁すると、中村悠平の左前打でサンタナが一塁から一気に三塁へ。この走塁が生きる。無死一、三塁の好機でオスナの三ゴロ併殺打の間にサンタナが本塁生還して先制する。
オリックス打線は原の内角をえぐるシュートの対応に苦しんでいたが、4回に主軸の2人で流れを引き寄せる。二死から三番・吉田正尚が右翼線への二塁打で出塁すると、四番・杉本裕太郎が「(吉田)正尚をかえすことだけを考えて打席に入りました」とフルカウントからスライダーを中前にはじき返す適時打で同点に追いつく。
だが、ヤクルトの四番・村上宗隆がここで奮い立つ。直後の4回に先頭打者で外角の直球を振り抜き、左中間席に飛び込む勝ち越しソロ。「大振りせずにコンパクトに打つことができた。すぐに流れを持ってくることができたので良かったと思います」とオリックスを再び突き放す。
早く同点に追いつきたいオリックスは、相手のミスを得点につなげた。6回二死から吉田正が一塁・オスナの悪送球で出塁すると、杉本も左前打で二死一、二塁と好機を広げる。ヤクルトは原から左腕・田口麗斗にスイッチしたが、生え抜き野手最年長33歳のT-岡田がツーシームを右前にはじき返す適時打。「(二塁走者の吉田)正尚がよく本塁に走ってくれましたし、気持ちで打ちました。何が何でも勝って神戸に帰れるように頑張ります」と執念の一打で試合を振り出しに戻した。
オリックスは投手陣も力投した。山﨑福が6回途中5安打2失点と踏ん張ると、6回二死一、三塁と一打勝ち越しのピンチで救援した吉田凌が中村をスライダーで右飛に仕留め、ヤクルトに流れを渡さない。
そしてシンデレラボーイの一打が試合の流れを大きく変える。「八番・二塁」でこのシリーズ初先発に抜擢された高卒3年目の太田椋が7回一死二塁の好機で、この回から登板した石山泰稚のスライダーを右中間に運ぶ勝ち越しの適時三塁打。「この(日本)シリーズ初めての出場でしたし、しっかりとランナーをかえすこと、後ろにつなぐとこを考えて打席に入っていました。打った感触も良かったですし、打球が抜けてくれてうれしかったです」と三塁の塁上で右こぶしを突き上げた。続く代打・モヤも右前適時打で2点差に突き放すと、8回も伏見寅威の左中間適時二塁打で5点目を追加した。
苦しい展開になったヤクルトだが、劣勢をはね返す強さがある。8回に救援したヒギンスに対し、塩見泰隆、青木宣親が連続四球で無死一、二塁と好機を作ると、三番・山田哲人がチェンジアップを左翼席上段に運ぶ特大の3ラン。「3点差ありましたが、チーム誰一人あきらめず何とかしようという気持ちがありましたし、そのみんなの気持ちが後押ししてくれました」と起死回生の一発で同点に追いついた。
1イニング、1球ごとに戦況が目まぐるしく変わる白熱した試合で、決着をつけたのはオリックスのジョーンズだった。メジャー通算282発の長距離砲は9回に代打で登場すると、ヤクルトの守護神・マクガフの直球を左翼席中段に運ぶ一撃。再び勝ち越したオリックスは9回、今シリーズ初登板の守護神・平野佳寿が無失点で締めて逃げ切った。
殊勲の一発を放ったジョーンズは「今日の試合は後がないギリギリの状況だったので、あの場面で打つことができて良かった。(第6戦で)神戸に帰るのでたくさんの方たちが球場に応援に来てほしい」と呼びかけた。シリーズ2勝目で逆転での日本一に望みをつなげた中嶋聡監督は「追い込まれている状況は変わらないですが、最後まであきらめないで頑張ります。山本由伸で(3勝3敗の)タイにもっていきたいと思います」と27日にほっともっとフィールド神戸で行われる第6戦で山本由伸の先発登板を宣言した。
2021年11月25日(木)
東京ドーム ◇開始 18:04 (3時間16分) ◇入場者 20,580人
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | H | E | |
オリックス | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 2 | 1 | 1 | 6 | 14 | 0 |
東京ヤクルト | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 5 | 7 | 1 |